何かをしゃべろうとしたら、すぐにつまってしまってスムーズに言葉が出てこない。普段からカミカミなのに、人前で話すときは緊張してしまいもっとたいへん。さらに、八重歯が2本あって舌も短いから、発音がはっきりせず噛まずにしゃべっても相手から「いま何て言ったの?」と聞き返されることが多い。
言葉を噛む。人よりも緊張しやすい。八重歯に舌足らず。しゃべる上での四重苦ともいえる状態だったのは、かつての私です。そんな私を知っている友人たちは、「アナウンサーになりたい」と言ったとき、無理だ!と止めるのではなく、みな鼻で笑って呆れていました。それほど私のしゃべり方はひどかったのです。
すでにアナウンサー試験はスタートしていました。キー局、在阪の準キー局、名古屋、福岡、広島、仙台といった具合に視聴エリア内の人口が多い順番に放送局の面接が行われます。運よく書類審査に通ったものの、実技試験では緊張でガチガチ、また、噛むのではないかという不安意識が常にあり、原稿がうまく読めず不採用の連続。自分の性格を恨み、そして歯並びの悪さや舌足らずなことは親に不満をぶつけてしまうこともありました。何度も折れそうになる心をまっすぐに持ち直したのは、アナウンサーになりたいというたった1つの思い。こうなったらとことん努力してやろう!就職試験なんて1年も続かない。数カ月だけ死に物狂いで努力すれば絶対にいい結果につながる!そこには、何の根拠もありませんでした。ただ、言い訳ばかりして、自分のコンプレックスを恨みこそすれ、克服する努力が足りなかったことにようやく気づいたのです。
朝起きて、まず新聞記事をすべて声に出して読む。苦手なサ行・タ行・ナ行・ラ行の言いにくい早口言葉を、ゆっくりのスピードから言い始めて、噛まずにクリアに発音できるようになったら、可能な限りスピードアップして声に出す。ボイストレーナーの先生から個人的なレッスンを受け、発声の方法を根本から見直す。こういったことを約3カ月間続けました。夜中に発声練習をしすぎてノドから血が出たこともあります。声を出し続けると口や舌がとても疲れることを知り、実況アナウンサーのすごさを感じました。そういったトレーニングを続けるうちに、まわりから精悍な顔つきになったと言われることが多くなりました。たった3カ月でしたが、人生の中で毎日あれほど努力をしたことはありません。アナウンサー試験で、ライバルたちよりも自分の声が響くことを知ったとき、初めて自信というか手ごたえのようなものを感じました。そして、当時としては比較的早い時期に放送局から内定をいただくことができました。採用担当者から「キミの声に魅力を感じた」と言ってもらったときは涙がこぼれました。
幸いにして私は指導者や講師に恵まれコンプレックスを克服することができました。しかし、そうでなければ、今も話すことに自信を持てず引っ込み思案な性格のままだったかもしれません。もし、かつての私のように、緊張しやすく、噛むクセがあり、歯並びも悪いということで悩んでいる方がいればコンプレックス克服のお手伝いをさせてください。簡単に、すぐに克服できますよ!とは言いません。でも、努力次第でたった3カ月で劇的な変化を実感できます。自らがその体験者ですからコンプレックスを克服するためのノウハウならお任せください。私が講師をつとめる朗読教室は声に出して楽しむことを目的とした講座ですが、しゃべり方についての個別の悩み、相談にも心をこめておこたえします。